こんにちは、ちあです。私は重症心身障害児(者)入所施設で働く看護師です。
私は看護学生のときに重症心身障害児(者)入所施設で実習したことがきっかけで重症心身障害児(者)や重症心身障害児(者)入所施設について知りました。その時の実習がとても楽しかったのもあり、実習先だった重症心身障害児(者)入所施設で介護補助職員としてバイトを始めました。大学卒業までバイトを続け、新卒では急性期病院に就職しましたが、その後、元々バイトしていた重症心身障害児(者)入所施設へ戻ってくる形で転職して現在に至ります。
この記事では、重症心身障害児(者)入所施設での実習とバイトの経験について紹介します。
私は学生時代の実習とバイトで重症心身障害児(者)の魅力や重症心身障害児(者)と関わる楽しさを学びました。実習もバイトもとても楽しく充実していたので看護師になったらこの施設に絶対に戻ってくると決めていました。
責任もない、仕事内容も簡単だった学生時代の話ですが、私がどのように魅力を感じたのか当時の気持ちや仕事内容を振り返って書いています。重症心身障害児(者)看護に興味のある方は是非読んでみてください。
大学の早期体験実習
看護職の仕事の実際を学ぶ早期体験実習
私の通っていた大学では1年生の前期で「早期体験実習」という実習がありました。看護についてはまだほとんど学んでいない状態ですが「実際に看護職が働く現場を見学することで看護職の仕事の実際を学ぶ」というものでした。
実習場所は病院や施設、訪問看護ステーション、都道府県・市町村保健師、助産院、離島の診療所など様々でした。実習施設が多様であることもあり、実習場所は第五希望まで希望を出すことができました。ですが、やはり人気のある施設は偏りがあり、希望人数が多い施設は抽選でした。希望の施設に当たらなかった学生は希望していない施設へ実習に行くことになります。
実習先施設の希望調査
大学1年生の私は総合病院や助産院に興味があったので希望上位にはそれらの施設を記入しました。でも、希望が全て落ちて全然知らないところに行くのはいやだなと思ったので、第五希望には大学から一番近く徒歩で行ける重症心身障害児(者)入所施設を記入しました。というのも、私は大学までバス通学をしており、遠い施設だと実習に行くのも大変だと思ったので、せめて通いやすい場所にしたいと思ったのです。重症心身障害児という言葉は大学1年生の私は初めて聞く言葉でしたし、周りにも重症心身障害児(者)入所施設に興味のありそうな学生はいませんでした。そして、抽選の結果、重症心身障害児(者)入所施設への実習が決まりました。
実習内容は「モデル看護師」の見学
実習は週に一度、計4回でした。実習担当の看護師さんが「モデル看護師」として仕事内容を教えてくれます。学生はモデル看護師について回り、仕事の見学をします。学生が何かを行うことはありません。見学のみの実習です。看護師が実際に行っている処置や医療ケアなどについて説明を受けながら普段の仕事内容やその職場での看護職の役割を学びます。
実際の実習内容
実習先の病棟は福祉型障害児入所施設
私が実習で行った病棟は重症心身障害児(者)入所施設のなかでも医療ケアが比較的少ない重症心身障害児(者)が入所している病棟でした。福祉型障害児入所施設に当たります。施設では入所している重症心身障害児(者)を「利用者様」と表現していたのでここでも「利用者様」という言葉を使わせていただきます。
モデル看護師の仕事内容としては食事の際の与薬、皮膚トラブルへの対応(軟膏塗布など)、レクリエーションの際の利用者様の見守り、利用者様の訴えへの対応などでした。看護師の他に介護スタッフがたくさんおり、入浴介助や食事介助、レクリエーシなどの生活援助を行っていました。看護師は時間が空けば生活援助も行っていました。
入所している利用者様は会話が可能で車椅子自走もできる方が数名いました。他にも、しゃべることはできなくても言語理解力はありイエス・ノーなどの受け答えができるなどコミュニケーションが取れる方が多かったです。
「モデル看護師」の働き方に魅力を感じた
モデル看護師をしてくれた実習担当の看護師さんはとても明るく利用者様からも慕われている方でした。モデル看護師が仕事をしていると利用者様がおしゃべりをしに来たり、モデル看護師が移動するたびについて行く利用者様もいました。言葉を話せない利用者様もモデル看護師との関わりで笑顔になる姿が印象に残っています。
モデル看護師は利用者様一人ひとりの性格や好みを理解しており、その利用者様に合った言葉や好きな話題を出してコミュニケーションを取っていました。モデル看護師と利用者様の関係性がとても良く、モデル看護師は利用者様との関わりを大切にしており、日々の仕事を楽しみ、やりがいを感じながら仕事をしていることが伝わってきました。
難しい看護技術や医療ケア、救急外来のような緊迫した医療現場の雰囲気はなかったけど、生活に寄り添い信頼関係を大切にする働き方にとても魅力を感じました。
この実習で長期的な関係性を築きながら生活を支える重症心身障害児(者)看護の魅力を学んだことがきっかけで、私は今この施設で働いています。実習を担当してくれた看護師さんには今でもとても感謝しています。
重症心身障害児(者)入所施設でバイト
重症心身障害児(者)と関われることを探す
夏休みの学生ボランティアは応募を逃す
早期体験実習は、重症心身障害児(者)施設で働く看護師の働き方やその魅力を学ぶことができ、とても充実したものになりました。早期体験実習が終わり、重症心身障害児(者)入所施設を離れることに寂しさを感じた私はボランティアなど何か重症心身障害児(者)入所施設で利用者様と関われることはないかとホームページで調べていました。すると夏休みの学生ボランティアを募集しているのを発見しました。しかし、見つけたのが夏休み終盤だったので応募することはできませんでした。
パート職員の募集を見つけて応募
さらに調べると求人ページにパート職員の募集を見つけました。時間帯はいろいろありましたが、大学の最終講義が終わってからでも間に合う18時から20時の枠がありました。資格不問で当時最低賃金が660円台だったのに対し時給はなんと1000円。大学からも徒歩圏内で通いやすいです。ちょうどバイトも探していたので、迷わず応募し、採用していただきました。
重症心身障害児(者)入所施設でバイトを始める
配属されたのは医療型障害児入所施設
配属されたのは早期体験実習で行ったのとは違う病棟でした。早期体験実習で行った病棟はほとんど医療ケアを必要としない利用者様が入所していたのに対し、今回バイトで配属された病棟は医療ケアを必要とする利用者様が多く入所する病棟でした。医療型障害児入所施設に当たります。実習で行った病棟に比べて生活自立度は低めでコミュニケーションを取るのが難しい利用者様も多かったです。医療ケアを必要としない利用者様も3割ほどいました。
仕事内容は食事介助とおむつ交換、洗い物やごみ捨てなどでした。病棟スタッフは看護師の他に介護福祉士や保育士、児童指導員などがおり、私は介護補助職員として介護職員の下で働いていました。
バイト中の仕事内容
仕事をしていて、 特に楽しかったのは食事介助でした。利用者様と一対一で関われる時間です。最初は利用者様がお口を開けてくれるタイミングが分からなかったり自分でスプーンを持つ利用者様の手の動きに合わせて介助するのが難しかったりしましたが、次第に慣れていき、一人ひとりの特徴が分かってきてスムーズに介助できるようになりました。
むせ込みが多いなど食事介助の難しい利用者様は介護職員や看護師が食事介助を行っていたのでパート職員の私は比較的食事介助しやすい利用者様を担当していました。
おむつ交換も最初はびっくりしたけどすぐ慣れました。重症心身障害児(者)では変形や拘縮があったり動き回っておむつがずれやすかったりすることが多いのでおむつの当て方もバイトをしていて上手になったと思います(笑)。
入所している男の子と仲良くなった
バイトしていた中で、入所している小学生の男の子と仲良くなりました。その子は会話ができるレベルの子でとてもお喋りでした。夕食を食べ終わると私のところにやって来て、いつもお喋りをしていました。スポーツが好きで野球やバスケットボールの話、しりとりやイントロクイズのようなゲームをしたりしました。私に懐いてくれていて「ちあさん!ちあさん!」と車椅子を一生懸命自分でこいで私のところにやって来てくれる姿が本当にかわいかったです。ちなみに車椅子操作は自分でこぐ練習中で、ゆっくりゆっくり短距離の移動しかできませんでした。仕事の合間なので関われる時間は短かったけど、その子との時間が一番楽しかったです。
利用者様と関わる時間が楽しい
他の利用者様とも、20時に自分の仕事が終わってからベッドサイドに行きお話したり簡単な歌を歌ったりして遊んでいました。コミュニケーションを取るのが難しい利用者様も私の声に反応してくれたり顔を向けたりしてくれるのが嬉しかったです。利用者様の表情やしぐさも可愛くて見ているだけで楽しかったです。みんな素直でかわいくて利用者様と関わる時間は癒しの時間でした。
利用者様との関わりが本当に楽しくて、夏祭りなどにイベントに参加したり入所している子どもたちが通う特別支援学校の運動会や発表会を見に行ったりもしていました。
バイトは身軽に働けて利用者様との関係性も築ける
バイトという立場は責任もほとんどなく、勤務時間も短く仕事内容も簡単だったのでストレスやプレッシャーを感じることなく働くことができました。利用者様と関われる時間もたくさんありとても楽しかったです。 バイトを辞めたいと思ったことはなく、むしろもっと働きたいと思っていました。
大学卒業時もバイトを辞めるのがとても寂しくて、卒業後バイトを辞めた後もコロナで面会制限がかかるまでは定期的に病棟に遊びに行ったり施設や特別支援学校のイベントに参加したりしていました。遊びに行ったときは私の顔を見て利用者様が笑顔になってくれてとても嬉しかったです。
早期体験実習とバイトを振り返って
早期体験実習とバイトを振り返ってみて、自分が利用者様との関わりをとても楽しんでいたことを思い出しました。
今は看護師として働いているので仕事量も増えて責任も大きくなり忙しい毎日を送っています。利用者様と遊べる時間もほとんどありません。バイトをしていたときと比べると仕事で関わっている時間は増えているのにお喋りしたり歌を歌ったりする時間は減っているなと感じます。でも、今でも利用者様との関わりは楽しいですし、話しかけて笑顔になってくれるととても嬉しいです。
今は責任も重くなり、仕事量も増えて大変なこともありますが、今回の振り返りをきっかけに、初心を思い出して利用者様との関係性を大切にし楽しみながら日々の仕事に取り組みたいと思います。
実習のときの「モデル看護師」のように、一人ひとりの利用者様に寄り添いコミュニケーションを大切にして長期的な関係性を築いていき、利用者様から慕われる看護師になれるように頑張ります。